こんにちは、ゲンゴロウです。
メッス近郊は、古くから栄えた地域で、ローマ帝国の遺跡がよく残っています。皇帝が威信をかけて建設した水道橋。
メッスから一駅のところにある町ジュイ=オ=ザルシュに残る巨大な水道橋の遺構。水源から水を汲み、それをメッスまで届ける役割を担っていました。
ご覧下さい、この壮大さ。今から2000年前に作られたとは思えぬ高度な建築技術。土木に秀でたローマ人の真骨頂ですね。
しかしこの歴史的建築物も、19世紀には地元住民の住宅として再利用される憂き目に。今も残る赤レンガは、橋柱が家の壁として利用されていたことの証です。
この水道橋の歴史的価値を見抜き、保存を訴えたのがメリメ。あの名作「カルメン」の作者プロスペル・メリメです。
メリメのおかげで、ぼくも今、古代人の息吹を、間近に感じることができるわけです。メリメに感謝ですね。
一通り見学が済むと、帰りの列車まですることもないので、モーゼル川のほとりで休んでいました。すると、どこからともなく、一匹の赤毛の犬が近づいてきました。
彼の名前はスピカ。すっかり意気投合したぼくたちは、河原を散歩しながら、歴史話に花を咲かせました。
スピカくんと別れた後、まだ時間があるので、近くの教会に入ってみました。町で一番小高い丘の上にあるところから、かつて町の中心的存在だったことが伺われます。
この日は復活祭の休日でしたが、参詣者は見当たらず、どこか寂しく感じられました。やはり、カトリックの本場フランスでも、かつてのような信仰は薄れているのかもしれません。
でも教会内にはレコードの賛美歌が響き渡り、美しいメロディーを奏でていました。それが妙にゲンゴロウの心に染み渡ります。
時刻は夕刻。傾いた陽がステンドグラスから差し込み、堂内はプリズムで眩いほど。マリア像も一層美しく輝いて見えます。
無人駅のホームで列車を待つゲンゴロウ。もう二度とこの駅に来ることもないと思うと、得も言われぬ旅情が溢れ出て、なぜか涙がこぼれてきました。また、お便りします。