ゲンゴロウのロレーヌ日記

くまのゲンゴロウが,ロレーヌ地方の町メッスに留学しました。

アルケスナンの王立製塩所

こんにちは,ゲンゴロウです。ぼくは今,憧れの世界遺産「アルケスナンの王立製塩所」に来ています。

 

ここはルイ15世の治世下,建築家ルドゥーによって作られた製塩所。でも,ただの塩工場ではありません。ルドゥーの夢が詰まった建物なのです。

 

敷地は半円形で,直線部の中央に製塩所長の家を,その左右には製塩所や労働者の住居などを左右対称に配置。本来は完全な円形とすることで,世界の調和を表現する予定でしたが,叶いませんでした。

 

正門を見てもギリシア建築のようで,まるで宮殿。じっさいルイ15世はルドゥーの設計案に難色を示したそうです。

 

すでに門の装飾が洞窟を思わせる作りで,現代の工場とは似ても似つきません。


門を潜ると,正面に製塩所長の家。これまたギリシア神殿風の建物で,中には礼拝堂が設置されていました。日曜日には所長のみならず,労働者も集まって,神に祈りを捧げたのです。

 

細部の構造も独特。特に柱は円柱と立方体を交互に組み合わせたような形で,とても魅力的。

 

所長の家の隣に並ぶ製塩工場には,流れ出す塩をモチーフにした装飾。


所長の家の左右には,半円形を描いて,労働者の家や倉庫などが対称的に並んでいます。ベルサイユ宮殿の庭園と同じ発想ですね。

 

ルドゥーは,ここが単なる工場ではなく,管理者と労働者が一体となって運営する小宇宙となることを夢見てたのです。

 

だから本来は,工場の敷地も円形にして,完璧な,欠けるところ無い世界を表したかったのです。それが予算の都合上,半円形にとどまったことは先述の通り。

 

残念ながら一世を風靡したルドゥーの建築物は革命などで破壊され,ほとんど残っていません。しかし残された図面や,実現することのなかった設計案などを見ると,彼の先駆性がよく分かります。

 

内部は塩の博物館。当時の精製方法や塩の持つ文化的意義などが,丁寧に紹介されています。

 

ちょうど製塩所内部で開催されていたのが,フォロンというベルギーの現代芸術家展。バンド・デシネの祖国ベルギー出身だけあって,漫画チックながら,強い風刺性がインパクト充分。

 

製塩所長の家の内部に張り巡らされたフォロンの絵画。

 

よく見ると沢山の人が,新聞を読みながらミンチにされようとしています。ジャーナリズムに対する皮肉でしょうか。

 

ちなみに敷地内の至る所にフォロンの彫刻が置かれていますが,この製塩所はフォロン推し?

 

というわけで,本日は憧れのアルケスナンを満喫した一日でした。中には軽食レストランもあって,昼食もとれますし,ホテルも併設されています。フランスに行かれた際には,ぜひ一度お訪ねください。また,お便りします。